NIKKEI NETの記事「産学連携でソフト技術者育成、全国に専門大学院」より。
産業界と大学が連携してソフト技術者の育成に乗り出す。全国の大学が専門大学院を開設し、日本経団連と富士通、日立製作所などIT(情報技術)関連14社が教員を派遣したりカリキュラムを作成して共同運営する。企業の情報システムや自動車・家電に組み込まれるソフトの技術者不足は深刻で、システム障害の一因になっている。即戦力を育て製造・サービス産業の国際競争力の底上げにつなげる。
こうやって技術者育成をするのは良いと思うんだけど、今のIT業界みたいにデスマ、サービス残業、n次請け構造なんていう負の遺産が残っている限りは、せっかく育てた技術者も幻滅して業界を去っていくんじゃないかなぁ…。それともこういうところを卒業した人は研究部門あたりで優遇されたりするんだろうか。
日立やら富士通やら大手メーカーが参画してるけど、けっきょく大学院出てメーカー入って外注管理やってる…なんてことにならないんだろうか。それだともったいないだけだ。
こういう教育の場などを通じて、いちばん先に底上げしないとしけないのは現場の開発者レベル(設計・製造)だと思う。大規模プロジェクトで複数の会社がたくさんの開発者を集めた時にわかるけれど、そのスキルレベルのバラバラさ。
A社のチームは比較的品質の良いモジュールを作るけど、B社のチームは品質があまり良くなくて、結合試験で足を引っ張るなんてシチュエーションは良くあると思う。さらに、スケジュールが押しているとか政治力によって、せっかく品質の良かったA社担当のモジュールをB社担当モジュールの動作に合わせるように改修しないといけない、なんて本末転倒なこともありがちなのでは。
そういうスキルのバラバラさのプロジェクトチームがシステムを作り上げることが、デスマーチやシステム障害の要因になっているのかと。
なぜそうレベルにばらつきが出るのか…個人の問題もあると思うけれど、「IT業界=人売り」と考えている会社が多いからだと思う。スキルではなく、人月単価を売りにしている会社は粗製エンジニアを送り込んでくる確率が高い*1。
送り込まれる側も「単価安いから、ちょっとこっちが火傷するかも」と感じつつ「まぁ工数も無いし、なんとかなるだろう」と思って受け入れてしまい、けっきょく火を噴く…というパターンに陥る。
聞くところによると、一部には極端に人月単価が安い技術者を出す会社があるようだ。人月30万円台というのもあるとか。地域的に単価が低めと言われる九州で仕事している私の周りでも、さすがにそんな例は聞いたことがないが、あるところにはあるのだろう。果たしてそんな待遇で働く技術者本人はどういう心境なんだろうか…とその話を聞いたときに思った。
でも安さにつられて使ってしまう会社があるんだろう…*2。こういう暗澹とした事例がある以上、IT業界に対する魅力はあまりないのではないだろうか。
視線と人気が集まるのは表舞台にいつも立っている、アルファギークとかアルファなんとか、とかITベンチャーのなんとか、と呼ばれるごく一部の人たちだけ。そういうところを目指す若い人は多いだろうが、本当にIT業界の大部分を占めるソフト技術者*3が光を浴びるようにならないと、いくら人を育成してもアンバランスなIT業界というのは変わらない。
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