仕事中にだけ、うつ状態(注意・集中・決断の能力低下、軽い憂うつ感)になるという人がいる。
これをこの本では「社内うつ」と定義しているのだが、これは「うつ病」や「心因性うつ状態」とは異なり「適応障害」に分類されるらしく、正確には「うつ」では無いようだ。
上司・同僚などの人間関係がうまくいっていない、別の部署に異動になり仕事内容が変わったなどのストレスを感じさせる要素(ストレッサー)に対して、負担を軽くしようとする対処能力(コーピング)がうまくいかなかった場合に社内うつになりやすい。
この本の前半では「なぜ社内うつになるのか」というストレッサーとコーピングの関係から見た分析が、後半ではストレッサーが発生する原因と、日本の組織やそこで働く人間について(成果主義の功罪など)分析している。
社内うつの場合は、ストレッサーを排除すれば速い時間で症状が改善するのが特徴で、自分に対するストレッサーは何かを認識し、その負担を軽くするように考えたり行動したりするように心がけると良いようだ。
内容については浅く広くという感じで、あまり突っ込んだ解決法は出てこない(組織上の問題に起因する場合は自身での対応は難しい)ので、そのあたりを期待すると不満が残るかも知れない。
しかし、「社内うつ」という症状が存在するということが示されたことで、同じような感情を持っていた人には拠り所になると思う。またコーピングのための考え方などについてはよく仕事術の書籍などでも上げられる項目が多いが、改めて読んでみると参考になるものがあるかも知れない。
「社内うつ」のような症状に思い当たる人は、一度読んでみても損はないだろう。
ただし、読んだだけで心が晴れるような即効薬的効果を求めないで。
仕事中だけ「うつ」になる人たち―ストレス社会で生き残る働き方とは | |
小杉 正太郎 川上 真史
日本経済新聞社 2004-09 |
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