この手の本は心が健康な人が読んでもあまり意味がない。
「生きることに疲れている人」が読むための本であるが、また心が疲れている人にとってもその心的状態によって内容の受け取りかたが違ってくる。
「疲れているけれど、自分自身を客観的に見つめる余裕が残っている」人向けだろう。抑うつ状態、マイナス思考のひどい状態の場合に読むと、いちいち痛いところを突かれるようで不快に思うかも知れない。
認知心理学で出てくる、「メタ認知」で自分の精神状態を見つめるにはちょうどよい本だと思う。
内容としては生きることに疲れた人は、なぜそのような状態になったのかを「親子の役割逆転」という幼少期からの環境条件や、成人となってからの思考、行動パターンについて具体的に分析し、指摘している。
私の場合は、読んでいて自分の精神状態について少しだが整理をつけることができた気がするし、また自分のような精神状態は自分だけに特殊なものではなく、ある環境下で生まれ育って生活してきた場合に起こりうることだというのが分かっただけでも少し気が楽になったような感じだ。
もちろん、自分以外にもそういう人がいるからと言って安心するだけではなくて、その状況を改善する必要はあって、
毎日嘆いていても状況は変わらない。辛い状況に耐えているうちに人は消耗する。
というように我慢しているとどんどん生きる力が消耗してしまう。
だから、「生きることに疲れたときは人生の節目であり、自分自身を理解するきっかけであり、幸福へのターニングポイント」として捉えないと何も変わらないのだ。
ただ一つ、この本には具体的な解決法はあまり出てこない。
私もそれを目的に最初は買ったのだが、ハウツー本ではなく先に書いたとおり「自分をメタ認知」するためというのがメインであって、解決策が今すぐ欲しい人には向かない。ただし自分と向き合い、自分の状態を整理したい場合には使えるはずだ。
心の休ませ方―「つらい時」をやり過ごす心理学 | |
加藤 諦三
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