近ごろCMにも出ている齋藤孝氏の本。
働くことに意義が見いだせない、楽しくない、モチベーションが下がっている人には、自分の中のやる気のスイッチを全部とは言わないがいくつか入れてくれる本に違いない。
キーワードとして”ミッション、パッション、ハイテンション”がまず出てくる。著者は仕事の前にこのフレーズを叫ぶと良いと「斉藤メソッド」を謳っているが、さすがにそれは恥ずかしくてできないだろう…。
ただ、その後に続く本文では、
ミッション…仕事に使命感を持つ。職人気質をもって仕事に取り組む
パッション…ネガティブな体験を仕事のパワーに変える。自分の理想へ近づくために。
ハイテンション…テンポの速い仕事、速い判断、生き生きとして仕事する
など、それぞれについて松下幸之助、夏目漱石、また矢沢永吉や著者自身の体験を盛り込んで説いている。
特に、技術者の人にはミッションの章にある「職人気質」の感覚は共感するところが多いのではないかと思う。自分は職人であることを意識するようにし、また職人としてのアウトプットを目指すことで単純作業であってもその作業に楽しみを見いだすという部分や、色んな作業を職人レベル(深く思考しなくてもこなせる)に高めることで、脳自体に余裕を持つという考え方など。
仕事の誇りのために、自分の時間と労を惜しまない職人気質と対極をいくものとして、”時給感覚”があげられる。時給感覚というのは、自分の時間を投げ捨てて、その分を換金するという発想である。ミッション感覚とはまったく無縁のものだ。これはどんな仕事もつまらなくしてしまい、人間を腐らせてしまう、非常に危険な考え方だ。
その仕事によって自分が向上するかどうかは二の次で、自分の持っている資産である時間を売り渡していく、そんな時給感覚のサイクルができあがってしまうともう泥沼だ。自尊心を腐らせるし、当人が思う以上に周りにとって迷惑である。
仕事に楽しさを見いだし、「職人」の感覚で仕事をしないとやりがいが生まれないということも書かれており、まったく同意できる内容だと思う。
また「経験知」という考え方や「受難→情熱で難局を乗り切る」「自分をアレンジ」など、仕事に疲れた人には読みどころは随所にある。本文中の太字部分の前後を流し読みするだけでも要所は押さえられる作りになっているのでそれを追いかけるだけでもいいだろう。
一言でいえば「ポジティブシンキング」ではあるが、他の本に見られる「無理やり前向きに考えるようにする」のではなく、ポジティブになるために自分の外堀から順番に埋めていく、というようなあまり無理のない流れになっていることも読んでいていちいち納得してしまう要因だろう。
私にとっては心の中のモチベーションのスイッチがいくつかONになったし、モチベーションが低くなってきたら読み返したい本だ。
働く気持ちに火をつける―ミッション、パッション、ハイテンション! | |
斎藤 孝
文芸春秋 2005-02 |
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