起業と転職と言うが、正直に受け止めて馬鹿を見ないだろうか

IPAの討論会について、ITProがさらに記事を書いているが...

学生とIT業界トップの公開対談で胸を衝かれたこと---IT産業を呪縛する“変われない日本”
IPAのイベントでの学生とIT業界トップの公開対談を聞いていて,一瞬胸を衝かれた。IPA理事長で元NEC 代表取締役社長の西垣浩司氏のこの言葉を聞いたときのことだ。

正直なところ、話がバラバラでそれを無理やり「日本は古い」とまとめている感じも受けなくもないのだけど、読んでていろいろ思ったこと。

コンピュータを作ることが本業ではなくなったメーカー

企業として,必要としている人材を本音で表現した発言なのだろう。誤解や幻想は解いておいたほうが学生にとっても企業にとっても幸せだ。

 技術力とプロジェクト・マネジメント能力のどちらかが,他方より高尚だとか重要だということはあり得ない。どちらも社会を成立させ運営するために必要欠くべからざる大事なものだ。

 ただ,NECもかつては紛れもないコンピュータ・メーカーだった。

このハードウェアに関するくだりをいきなり持ってきているのでわけがわからなくなっている気がする。とくにこの3つの段落の繋がりはちょっと意味が通らない。それぞれの段落で言っていることはわかるのだけど。

必要とされているのは技術ではなく,プロジェクト・マネジメント能力や調整能力。求められているのはメーカーの人材像ではなく,ゼネコンやエンジニアリング会社のそれだ。

現実は技術力<マネジメント力、という構図。給与などの待遇を見てもその差は歴然。あくまで技術的な作業はマネジメント屋が下請けに投げればいいという状況。

対談では言わなかったことがあるという。「開発の現場は,派遣技術で成り立っている。彼ら派遣技術者が,IT業界のイメージを作っている」。それが現実だと。大企業の正社員に求められているのは派遣や下請けをうまくマネジメントすることだ。

もし本番で彼が質問してくれれば、彼は英雄になれてたかもしれないのに。重鎮たちはなんて答えただろうか。勿体ない。

大企業の正社員できちんとマネジメントできる人は多くない。たいていは失敗して火を噴くのだが、それを下請けに一括請負などで押しつけているだけ。だから下請けは負け組といわれる所以。

もうひとつ、大企業で技術をやりたいと思っている社員は、社内で居場所が無く、仕方なくマネジメントをやっているか、社内で半分干されたように技術の作業をやっていたり。

解雇が比較的容易な米国では知識と経験のあるシステム責任者を社員として雇える。

この解雇が容易=責任者を雇用できる、の因果関係がパッと理解できなかった...。システム導入が完了したらお役ご免でクビにできるということだろうか。

社員であれば,企業のプロセスをパッケージに合わせろと言える。だが,外注が発注元にパッケージに合わせろとは言えない。市場が拡大しないから日本では優れたパッケージ・ソフトウエアが育ちにくい。

アメリカではどうなのか知らないが、パッケージに業務を合わせるだけなら、企業としての特色って薄れてしまうのではないだろうか?ライバルの企業と違ったことをやりたいのなら、業務フローも違ってくるだろうし、パッケージに合わせていいところと悪いところがあると思うのだが、パッケージが使えないのが悪のような書かれ方には違和感がある。

技術者は自分が幸福になるために,もっと転職,起業すべきだと語る人物がいる。Rubyの作者まつもとゆきひろ氏だ。

まつもとさんに盾突くつもりは無いが...。転職も、「転職回数が」「年齢が」と言われる転職市場で果たして自分の思う存分転職できるのか、起業にしても資金の調達や仕事の獲得で忙殺されないか?良い技術があるから、いいサービスがあるから、資金を出しましょう、仕事をお願いしましょう、という土壌に日本はなっているのだろうか。

起業して自分が本当にやりたいことをやる前のハードルが高すぎるのでは。

有賀氏の意図は「社内だけで通用するスキルや人脈ではなく,社外で売れる自分の市場価値を意識し,値段を上げることに努めよ」ということなのだと理解している。

理想はそうだが、毎日大量の仕事に押しつぶされている人たちに同じ事が面と向かって言えるのだろうか。向上心のある人ならいつもこういう事は考えているが、たいていは使い潰されかかっているので自分の値段を上げることもままならないケースも多いだろう。

それを体現している人々がいる。IT技術の最先端領域で自分の書いたプログラムや得たノウハウを公開し,多くの技術者から感謝と敬意を集める「アルファギーク」と呼ばれる技術者たちだ

なぜここでの例えがアルファギークなのだろうか...。上位1%にも満たないアルファギークを引き合いに出されても、そのレベルに到達してない99%以上の技術者はどうなのか。

アルファギークのレベルなら、名声もあるだろうし、起業しようが転職しようがほぼ間違いなく成功するだろう。ただそれより少し下の層が同じ事をやった場合どうか?仮に起業して失敗したら、負債を抱えるだけで敗者復活できるチャンスはあるのだろうか?

単純にシリコンバレーで行われてるような起業や転職の構図を今の日本に期待しても、ナンセンスだと思うのだが。

最近ではWebでサービスをやっているような会社は多少、起業しても報われるチャンスは出てきたように思うが、それ以外に例えば業務系でOralcleのエキスパートたちが集まった会社を起業したとして、果たして仕事をくれる会社がどれくらいあるだろうか?

今は何でもWebに絡まないといけないような風潮もあるけど、ネットワークが得意、業務系のデータベース関連が得意、というのが単独で商売になるようにならないといけないのではないだろうか。

すべての技術者がWeb系の開発をやっているわけではないし、例えば組み込みだって、ある分野のエキスパートが起業して、零細起業だからと敬遠されずに仕事が取れるような状況にならないと起業はアルファギーク以外にはリスクの高いもの以外の何者でも無いような気がする。

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