私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。 (講談社文庫 し 82-1) | |
島村 英紀
講談社 2007-10 |
先週、羽田空港で帰りの便を待つ間に見つけて買った本。
詐欺容疑で逮捕されてから保釈されるまでの様子が克明に、かつ淡々と記録されている。大多数の人がこのような逮捕・拘留という体験はすることが無いだけに余計に興味を惹く内容だった。
まずは突然の逮捕にも関わらず、動揺せずに第三者的な目線で自分を見つめることができたところ、また好奇心からか目に見えるもの聞こえて来るものなどを細かく覚えて記録しているところがすごい。
これには筆者にとって全く身に覚えの無い無罪だという確信が、逮捕・拘留の生活の中でも心身ともに弱ることのなかった原因かもしれない。
それにしても拘置所の生活というのは当たり前だが制限が厳しい。筆者の場合は「接見禁止」という制限があったので余計にそうなのかもしれないが、外部の情報からの隔離されたり運動にしても何にしても限りなく制限がかかる。
もう一つ、この本のほとんどは拘置所での生活について割かれているけれど、今の裁判制度、検察と裁判所の慣れないのような現実が筆者の落胆と憤りを通して書かれていること。この本のもう一つのテーマだろう。
普通に考えれば無罪の状況なのに、納得のいかない罪状で逮捕状が出て逮捕され、そして執行猶予付きの有罪になってしまうこと、接見禁止や保釈申請などは検察の意見のほうが強く作用することなどなど…。ある意味、公権力の強さと怖さが垣間見られる。
重たい内容のように思えるが、筆者のプラス思考が出ているせいもあってかサラっと読める。ただ考えさせられる内容は多い。
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