日本のIT業界で時短は進むのか?

早く家に帰ろう--「時短」が進む米ソフトウェア業界

よその国ではソフト技術者の労働時間が短くなりつつあるようだ。

前々から「外国のIT業界でデスマーチはどれくらいあるんだろう?」「徹夜休出は当たり前のようなプロジェクトは日本と同じくらいあるんだろうか?」と疑問に思っていた私にとっては、少しだけ実情が見えた記事。

日本の場合はまだまだ「長時間働いてなんぼ」という現場が根強く存在する。「昼も夜も休みも無く働くことで、お客さんに頑張っていることをアピールする」なんていう管理職もいるくらいだ。お客にアピールして鼻が高くなるかもしれないのはその管理職一人ぐらいなもので、そんな上司の思惑で高稼働を強いられる現場の技術者はたまったものじゃない。

こういう管理職が存在するというのが日本では時短が進みにくいと思う原因の一つ。

二つめは企業の体質。

デマルコも「残業をしても得るものはない」と言っている。たしかに残業しても生産性はそれほど上がらない。しかし、受託開発をやっているような会社だと、生産性を上げすぎるのも自分の首を絞めてしまうことになりかねない。仮に生産性を上げて週40時間くらいで収まってくると、きまって別の案件やアイテムを上積みされるだろう。そうするとまた残業しないと終わらない量の仕事を抱え…。

つまりは会社は社員を倒れるギリギリまで働かせたい、仮に倒れても代わりの人間は居ると思っている場合が多いのだ。そういう場所では頑張れば頑張るほど自分が苦しくなっていく。そういう会社はまだまだ多いんじゃないだろうか?急成長を目論んだり、売上や利益を極端に追求するような会社は特にそのように思う。

三つ目は技術者の質の問題。

海外の事情はよく知らないが、日本ほど「なんとなくIT業界に入ってきて仕事している」人が多いところは無いんじゃないだろうか。オフショア開発でよく聞く、インドや中国、韓国あたりだと、IT技術者の地位や待遇が他の職業より高く、「比較的優秀な人しかなれない職業」となっているんじゃないだろうか。そうすると、仕事の質やモチベーション、スキルなどが高い人間が集まることになるので、デスマーチなどは起こりにくいのでは無いかな…と勝手に想像する。

比べて日本の場合は「IT土方」と言われるように、本来は高い頭脳労働であるだろうIT技術者という職業が、人間を使い捨てるような会社が多いせいか、「取り替え可能な部品」と化しているケースが多い*1。そういう業界の現状を見て、優秀な人間が業界に入らない状況になっている。そうすると技術者の「質より量」を求め、マンパワーでプロジェクトを押し切ろうとして「人材不足」と言って人をかき集めるが、コンピュータにまったく興味の無い人や適性に欠けるような人も集められてしまう。

こんな状態になってくると、とてもITのプロフェッショナルと言えない人たちが多く集まってしまう。つまり、仕事に対して「給料もらうため」と割り切り過ぎている人が多くなるのではないかと。

そういうモチベーションやプロフェッショナルさに欠けるメンバーが多いと、デスマーチの発生確率も上がるのではないだろうか。どこか人ごとのようにプロジェクトをやっている…というような。そういうのもあって時短が進まない、生産性が上がらないということもあるのではないかな…と思う。

日本で時短と言っても今ひとつ現実味を感じないのはなぜだろう。やってるところや人も少なからずあるだろうが、業界全体からするとごくわずかなんだと思う。そこが悲しい現実なのかも知れない。

  • *1: もちろん、オンリーワンとか秀でたスキルを持っている人はもっと別のフィールドが用意されているだろう。部品のように扱われるのは「その他一般」レベルのIT技術者とも言えるのかも知れない

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